茶の湯とともに
民家ホテル「金ノ三寸」は富山県高岡市にあります。高岡市は今は富山県となっていますが江戸時代は加賀藩として前田家が統治していました。加賀藩は藩祖である前田利家や2代利長が千利休の薫陶を受けたこともあり茶の湯が大変に盛んでした。現在も金沢は茶の湯を楽しむ文化が根付いています。高岡でも同様、茶の湯を楽しんできたという歴史もあり現在も継承されています。
お茶席に欠かすことのできないのが和菓子です。茶の湯の発展とともに和菓子の質の向上も当然求められ、オリジナルの銘菓を開発する和菓子メーカーがたくさん育ちました。
老舗大野屋
今回ご紹介する大野屋さんは高岡を代表する老舗和菓子メーカーの一つで民家ホテル「金ノ三寸」からは徒歩約15分のところにあります。大野屋さんは土蔵造りの観音扉窓が軒を連ねる旧北陸道沿いの商人町にあり、通りは重要伝統建造物群保存地区に指定を受けている山町筋通りといわれています。(山町とは高岡御車山祭りの「御車山」を保有する10ケ町を言います)。
重要伝統建造物保存地区とは昭和50年の文化財保護法の改定により、周囲の環境と一体化をなして歴史的風致をなしている伝統的な建造物群で価値の高いもの及びおよびこれらと一体をなして歴史的価値を形成する環境を含めて保存するために創設された制度で高岡では山町筋通りが指定第一号です。
ちなみに「金ノ三寸」がある金屋町もその後指定を受けています。
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大野屋さんは天保9年(1838年)に初代大門屋吉四郎が醸造所から和菓子屋に転じて始まったそうです。9代目となる現在まで山町筋にて和菓子を作り続け代表的なお菓子として「とこなつ」が有名で最近では和菓子を作りに使用する木型を使った和菓子屋が作るラムネも評判がいいようです。
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代表銘菓
とこなつは大野屋さんの看板の商品で地元の人には「大野屋のとこなつ」として親しまれています。直径3センチほどの丸いお菓子は白小豆を使用してつくられた中餡に和三盆がまぶしてあり餡の上品な甘さと和三盆の香りが口の中で広がる飽きの来ない銘菓です。
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高岡ラムネは和菓子作りの歴史の中で培っていた木型製作の技術を使い和菓子職人が一つ一つ丁寧に作った高岡らしいかわいいラムネです。モチーフも高岡に関したものや季節を感じられるものになっておりそれぞれが違うフレーバーで形で楽しめて味でも楽しめるものになっております。手軽なお土産として大好評だそうです。
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金ノ三寸と大野屋さん
金ノ三寸ではご来館のお客様に地元の銘菓を楽しんでいただきたくウェルカム銘菓として大野屋さんの以下の和菓子を2種類ご用意しております。
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田毎
満月のようにふっくらと焼き上げた焼き菓子
小豆餡に沖縄産の黒砂糖を使用しておりあっさりとおいし黒糖餡は癖になる味です。
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山町筋
山町を練り歩く御車山の車輪に白の粒餡を車軸に見立てた特製のきんつばとなっており、2つの餡を一度に楽しめる贅沢な和菓子です。
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和菓子メーカの底力
この時期年末年始は大野屋さんにはたくさんのお客様が和菓子を求めに来られます。お茶文化とともに栄えた和菓子文化の繁栄の象徴ともいえる老舗大野屋さんは高岡を代表する観光地山町通りの入り口にあります。町の繁栄を見守っているかのようなロケーションは単なる偶然ではなくもしかしたらこの町にいらっしゃった皆様に「お茶でも飲んでいきませんか」と話しかけたり「ようこそお越しくださいました」との声かけ役を担っているのかもしれないと感じました。そして「和菓子でもたべていかれ」と。もちろん高岡にはもっとたくさんの和菓子屋さんはあります。しかし大野屋さんは場所を変えずに営業を続けておられる数少ない和菓子屋さんです。9代続いた伝統の力は世の中の情勢が多少変わろうとも揺るぐことのない底力があると感じました。大野屋さんは高岡の変遷をじっと見守ってこられたのですね。高岡にはそんな和菓子を作るところがあることをもっとたくさんの人に知ってもらうべきだと強く感じました。そんな役割を「金ノ三寸」も担えていきたいと思っています。伝統がどうかすると都合の良いプロモーションのツールとして使われがちな時に真の伝統を工芸ではなく和菓子を通して新たに気づかせていただきました。
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