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3回目のGWを終え
2023.5.12 up

民家ホテル「金ノ三寸」はオープンから3回目のゴールデンウイークを迎えました。

コロナ感染が落ち着き約3年ぶりの規制のないゴールデンウイークとなった今年は連日お客様がご宿泊されたくさんの素敵な出会いをさせていただきました。

これを機に少し「金ノ三寸」についてこれまでを振り返りこれからを考えてみたいと思います。

コロナ禍から得た大切なこと

コロナウイルス感染がささやかれたころに着工、コロナ禍のオープンとなり当初の予定はすべて絵にかいた餅、開店休業が長く続く厳しさに直面しました。

お客様が来ない現実を受け入れその中でいかにお客様にご来館いただくかを考えることを余儀なくされたコロナ禍はないほうが良いのは勿論ですがそのおかげで得ることが出来たこともありました。

コロナ禍の移動はお客様もホテルスタッフに配慮されます。特に道徳を小さい時から学んで育った日本人は規則や人として正しい行いを大切にする故、行動規制が敷かれた中での旅行に少し罪悪感を感じるのでしょうか優しい言葉をかけていただくことが多かった気がします。ホテル側とすると実はそれ以上にこんな時期に来ていただくことへの感謝の気持ちを強く持っていました。感染リスクを理解しても足を運んでいただけるお客様の温かさに自然と感謝の気持ちが芽生えます。平時でももちろん感謝の気持ちをもってお客様とは接してはいますがその比ではなかったと思います。こんな気持ちはコロナ禍を経験したからこそ味わうことが出来ました。仮に「金ノ三寸」がオープンしてすぐにたくさんのお客様にお越しいただきコロナ禍のような苦しい期間を経験しなかったとしたら、来ていただいたお客様に対して現在のような気持ちでお迎えはできていなかったかもしれません。少なくとも感謝の気持ちは今よりは少ない気がします。

お越しいただいたお客様に最大の感謝の気持ちをもって接することの大切さは当たり前のことではあるのですがコロナ禍の厳しい時を経験したからこそしっかりと心にとどめることが出来たことだと思います。

お客様との時間の共有

民家ホテル「金ノ三寸」は一棟をそのままホテルとして一組のお客さまにご利用いただくというスタイルです。一棟貸切りのためチェクインを終えるとお客様とはほとんど接点がなくなります。それを望まれてお越しになられるお客様も少なくないと思っています。そのことは頭では理解しそこに何の不都合も感じなかったはずですがお客様を迎える回数が増えるにつれお客様がホテルをどう思われたか、高岡をどう思われたか、金屋町をどう思われたか、高岡銅器をどう思われたかなど気になることが多くお話しできないことにストレスを覚えるようになってきました。お客様との時間を共有したい。矛盾する願望が日に日に増していきました。

現在、ホテルはお客様が望まれたときは翌朝の朝食をお作りしています。ご宿泊の料金には含まれてはなく別料金として別途お支払いいただいています。地元食材を中心とした和食をホテルで調理して召し上がって頂きその時々でお客様との接点が生まれました。お話のきっかけは何でもいいのです。とにかく会話ができる環境が出来上がると後は話題を変えていけばなんでもお話ができることになります。

また、エントランスに設けたカウンターは現在バーとして使用しています。真鍮板を板金したかっこいいカンターは高岡銅器の着色職人が熟練技にて着色してあります。ここは現在は土曜日は通常営業そのほかは予約があった日の営業となっており、お客様が希望されたときはスタッフがバーを営業します。

朝食サービスとバーの営業はお客様との接点がないというストレスを解消してくれる画期的なサービスとなりました。ご利用いただくお客様はまだまだ多くはございませんがそのお客様とはしっかりとお話が出来高岡、金屋町、高岡銅器、金ノ三寸、四津川製作所をより知ってお帰り頂いていると思っています。

熟練職人が指導する銅板レリーフ製作

民家ホテル「金ノ三寸」は物作りを感じていただけるホテルです。ロケーションが高岡銅器発祥の地である金屋町であること、ホテル内では喜泉堂KISENといった高岡銅器が生活の中で感じたり使ったりできること、その他地元作家の作品を調度品として使用していること等ホテルに滞在していただくとそれを感じることができるのも「金ノ三寸」の特徴となっています。そんな物づくりの根幹をなす職人さんにフォーカスしてその技術を使った物づくりを技術指導を含めて行う仕組みを構築しました。高岡銅器が完成するまでに必要とされる技術はたくさんありますが比較的安全で安心して経験できる技術が仕上げという工程で必要とされる技術です。「金ノ三寸」では希望されたお客様には伝統工芸士 京田政春が細かく指導し、お客さまが描いたイラストを鏨という道具を使って立体的に表現しレリーフを製作していただきます。所要時間は約2時間ですが参加された皆様は時間のたつのも忘れて金づちを振っておられます。地場の産業をより多くの人に知ってもらうという意味において「金ノ三寸」がプロデユ―スするこの企画にはたくさんの可能性があると思っています。

特別な企画としての工場見学

民家ホテル「金ノ三寸」開業当時より特別な企画としてお客様にお勧めしたいと考えていることがあります。残念ながらまだそれは完全に仕組化はされておらず試験的なものにしかなっていませんが高岡銅器の最大のクライマックスを実際に見てもらうことです。現在は関係者しかその作業は見ることはできず、そうではない方は実際にその場でその作業を見ることは安全性の観点、作業中の集中力低下の観点などから立ち入り禁止となっており限りなく困難となっております。故にその作業は大概、画像や映像を通してのみ知っていただくことになります。もちろん画像や映像でも正しくその作業を伝えることは可能ですが1200度で溶解する金属のその温度感や独特の匂いはその場に居合わせないと絶対に感じれない貴重なものです。何よりも一瞬ではありますが危険を伴うこの作業には出来上がる商品の出来不出来がかかっていること、さらにはこれまでの工程を生かすか否かがかかる責任の重いものであり緊張の走るものであるという独特の世界があります。それを生で感じるそんな貴重な作業を知ってもらうことは高岡銅器の本筋を知ってもらうことにも直結し高岡銅器の理解が深まると考えていますし興味を持つ人は少なからずいらっしゃると思います。

民家ホテル「金ノ三寸」のこれから

ホテルがホテルとして機能することは当たり前で常にブラッシュアップしていかないといけません。お客様が求めることにアンテナを張ってかゆい所に手が届くまでのサービスを常に行って参りたいものです。

さらには「金ノ三寸」がこれからよりたくさんのお客様に御贔屓にしていただけるか否かはホテル+αではないかと思っています。鋳物発祥の地「金屋町」にあるホテルとしてこの町でどうあるべきかが大切だと思います。高岡銅器と「金ノ三寸」金屋町と「金ノ三寸」高岡市と「金ノ三寸」等々「金ノ三寸」を取り巻く環境をいかに巻き込んで多くの人に届けることが出来るか。いらっしゃるお客様もホテルのみではなくそれがある場所、ある理由までも訪ねていらっしゃいます。高岡銅器、金屋町といかに共存していくかがこれからの「金ノ三寸」にとってはとても大切なことになってきます。

民家ホテル「金ノ三寸」はコロナ禍の終焉を感じつつ少しづつ前に向かって進んでいます。

理想とするホテルに到達するのはいつになるかはわかりませんが理想は高く求めてまいります。

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