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鋳物踊り「弥栄節」
2022.11.27 up

民家ホテル「金ノ三寸」は富山県高岡市金屋町にあります。ここはかつては加賀藩として前田家が統治していました。高岡は加賀文化の影響を強く受けており使う言葉も金沢の人と似たところがたくさんあります。

加賀藩とのかかわりは高岡市金屋町が高岡銅器の発祥の地、鋳物の街として発展してきたことからも伺えます。高岡銅器の礎は加賀藩主2代目藩主前田利長が7人の鋳物師を招聘し手厚く加護したことが始まりと言われているからだそうです。

400年前の出来事です。当時のことやその歴史を探ってみたくなり金屋町鋳物資料館へ足を運びました。

高岡駅から続く広い通りをまっすぐ下り2体の鳳凰のブロンズ像がにらみを利かす鳳鳴橋を渡ってすぐの信号を左に曲がると一気に時代は昭和へとタイムスリップします。金屋町石畳通りです。石畳通りを約50メートル進むと左に高岡市鋳物資料館があります。かつては住居だった建物を改築し金屋町の歴史や高岡銅器の歴史など貴重な資料がそろっている資料館で高岡市が運営しているそうです。中をのぞくといきなりおはやしが聞こえてきます。胡弓の音色がリズミカルです。鋳物作りの作業歌として今日まで歌い継がれているおはやしだそうで、やがえふ踊りと呼ばれる踊りはこのおはやしに合わせて前田利長公の命日である6月20日に毎年開催される「御印祭」にて披露される鋳物踊りだそうです。これには鋳物産業の振興に努めた先人たちに感謝の思いを伝えるために神前にて踊る「奉納踊り」と前日に行われる住民参加型の「弥栄節町流し」があると教えていただきました。今は金屋町の自治会が中心となり歌と踊りを通じた地域住民の交流促進や次世代育成を中心とした保存、継承活動を行うために「弥栄節保存会」を立ち上げ活動されておられるそうです。今年,「弥栄節保存会」は公益財団法人サントリー文化財団より時代の変化や子供たちの要望に応じてアレンジを加えつつ住民自ら保存・継承する取り組みが高く評価され「第44回サントリー地域文化賞」を受賞されたそうです。この賞は全国各地で展開されている芸術、文化、伝統の保存、継承、美化、国際交流等を通じて地域文化向上と活性化に貢献した個人団体に毎年贈呈される賞だそうです。とっても興味がわいてきました。ぜひ来年は6月19日20日に金屋町に来て生の「弥栄節」を見てみたいと気持ちは来年の御印祭へと一気に飛び越えてしまいました。

ここ鋳物資料館には弥栄節だけではなくいろいろな鋳物にまつわる資料があります。

入ってすぐには大きなたたらと溶解炉があります。金屋町で鋳物産業が始まった初期のころの道具を復元したそうです。

たたらとはふいごの大きなものをいいます。たたらを踏んでシーソーのように双方が上がったり下がったりすることで風を作りそれを溶解炉に送り込んで金属を溶かしたそうです。

この作業を3日3晩繰り返していたそうです。弥栄節はその時にうたわれたそうです。踊りは後からうたに合わせて考えられたと聞きました。鋳物の仕事はとっても重労働だったということですね。

たたらを後に前に進むと土の塊に鉄の棒が刺さった得体のしれない塊が3体現れました。大型鋳物を鋳造するときの鋳造方法「焼き型鋳造」の説明です。加賀家を代表する銀鯰尾形兜のモニュメントを製作した時の型の展示です。完成品は新高岡駅構内に設置してあるそうです。原形を上下2つに見切り土をかぶせて型を製作し一方を外した後、2つの型を再び合わせ、ずれないように鉄の枠で固定した後溶解した金属を流し込みます。外型を壊し出てきたのが左の製品ということになります。これから仕上げという工程に入ります。いわゆるブラッシュアップを行っていきます。2か月から3か月かけて完成するロングランな工程です。完成品だけを見ていたのでこんなに大変な工程を得て出来上がるとは知らず完成品を見る目が変わってきました。奥深いですね。

その先には釣り鐘とさびた鉄鍋が展示してあります。聞くと2つには直接関係はないそうで鉄鍋は高岡銅器が発祥したころ盛んに作られたニシン鍋でした。そういえば高岡銅器と言ってはいますが最初は鉄器生産を行っており農工具やニシンをゆでるニシン鍋を作っていたと聞いています。今は使うことなく生産はされていませんが当時を知る貴重な資料ですね。釣り鐘は高岡銅器を代表する一つで鳴り物の生産も盛んにおこなわれおり現在も継続されていているそうです。さらにはおりんといった仏具にもその技術が及ぶようになっていったということらしいです。

さらに奥へと続きます。ここは第2展示室となっており企画展が開催されるということです。ここは有料となっていました。今回は時間がないので諦めました今度ゆっくりと来たいと思います。

金屋町鋳物資料館は裏口が金屋町緑地公園と連結しています。すぐに駐車場に行けました。車で来ても安心ですね。来る人のことを考え細かなところまで配慮してあり設計した方のやさしさが伝わってきます。

小さな町だと思っていましたが金屋には大きな歴史があり文化、産業が根付いていました。さらには住民がそれを一生懸命守っていることがよくわかりました。ますます金屋町が好きになりました。

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